株主優待の存続性と廃止・改悪の可能性は、企業の業態や株主構成などの諸条件によってはっきりとした傾向があります。

まず、「株主優待制度の問題点(税金編)」で述べたように、宣伝費と認められない優待は節税にならないので、高コストとなり負担の重さがそのまま廃止・改悪の理由となります。

つまり自社製品でない、自社のサービスに関係の無い株主優待は廃止・改悪の可能性が高い。これは比較的よく知られています。

また自社サービスの優待であっても、例えば鉄道会社の優待はコスト負担が軽いです。乗客を乗せず空気を輸送するぐらいだったら、例え優待客であっても乗せた方がマシだからです。優待で電車に乗った人でも売店でコーヒーを買ったり、系列のホテルに泊まったりして何かとグループにお金を落としてくれます。

遊園地、劇場、野球場などの装置産業の優待も、ガラガラよりは優待客を入れた方がマシでしょう。ハコを営業する経費は固定なので、頻繁に満席になるような人気の場所でなければ優待券をバラ撒いてもあまり負担になりません。これもやはり優待客がお金を落としてくれます。

最悪なのは飲食店の優待券です。飲食店は飲み食いする所なので、優待券を使って無料で食事する客はいっさいお金を落としていきません。優待マニアには現金払いをいかに少なくするか考えるのが趣味の客もいるぐらいです。もちろん優待券が無ければ来店しません。

株主ならば1000円の優待券のコストを回収するのに、いったいいくらの食事客を回転させないといけないのか、計算してみると面白いでしょう。しかもコストのマイナスを回収してもマイナスが無くなっただけで何のプラスにもなっていません。純粋に負担です。

食事券ほどではありませんが、ドラッグストアやスーパーマーケットなどのハレの場所でない所の商品券にも同じ事が言えます。

自社製品や自社サービスでない、業務に関係ない優待の代表的なものは、クオカード、カタログギフト、図書カード、お米券などの金券類や、お米や地域特産品の現物などがあります。

これらは広告宣伝費ではなく株主への贈答品として接待費で処理され、節税効果が無くコストが重いものです。一番改悪・廃止されやすい優待です。

また株主優待は海外へは発送されないし、大株主にとっては不公平感があるので、東証で一番取引の多いお客様である外国人株主には評判が悪いです。外国人株主の多い銘柄は優待の改悪・廃止リスクが高いです。

あとは市場昇格条件についてです。東証2部や新興市場から東証1部への昇格を目指す場合は、時価総額を大きくして株主の数を増やす必要があります。

その為分かりやすいエサとして、株主優待を新設する企業があります。1部へ昇格したとたん、用済みと言わんばかりに分かりやすく優待を改悪・廃止する企業があるのは当然でしょう。


まとめると、

株主優待の存続性が高いのは、優待品として自社製品や自社サービスを広告宣伝費として処理し低コストで提供している企業です。株主優待を株主還元策と見なさず、純粋に広告宣伝の手段として明言している企業ならなお良い。コストが固定の舞台装置産業もまた改悪の可能性が低いです。

株主優待の廃止・改悪の可能性が高いのは、

1 飲食券優待、商品券優待、業務に関係ないクオカード、カタログギフト、図書カード、お米券などや、業務に関係ないお米や地域特産品の現物などの優待を実施している企業。

2 外国人株主が多い企業。

3 優待を新設して1部昇格を果たした企業。

などです。

なお、会社の業績が悪化すれば当然優待の改悪・廃止リスクが高まりますが、逆に業績が好調でも油断してはいけません。なぜならば、「公平な株主還元」を理由に増配と引き換えに株主優待を廃止するケースがあるからです。なんだか笑ってしまいますが、これが株主優待の世界です。

最後に、直近に株主優待を廃止した企業のリストをあげておきます。株主優待実施企業のカタログ資料はありますが、優待を廃止した企業のリストは販売していませんし貴重な物です。

・キャリアデザインセンター(2410) お米
・ブロードバンドタワー(3776) セール招待券・クーポン券
・プロトコーポレーション(4298) カタログギフト
・インテリジェントウェイブ(4847) ウィルス対策ソフト
・オーナンバ(5816) クオカード
・日東工器(6151) 図書カード
・日置電機(6866) 特産品
・三菱UFJ(8306) オリジナルグッズ
・ポケットカード(8519) クオカード
・エーアイテイ(9381) カタログギフト
・大日本コンサルタント(9797) カタログギフト
・ケーユーホールディングス(9856) クオカード

株主優待ハンドブック 2017-2018年版 (日経ムック)




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