「株主優待を貰うためだけ」にはずっとその会社の株を保有する必要はなく、権利日の1日だけ株式を取得して権利を得れば良い事になります。

信用取引の空売りと現物買いの組み合わせ(クロス取引)で、株価の変動や配当の影響を受けず株主優待の権利だけを取得するのが株主優待クロス取引、俗称「優待タダ取り」です(厳密にはタダではない)。

別に違法では無いのでこの行為自体には問題はありませんが、永く株主になってもらいたい会社側としては、迷惑な動きと言えます。

優待クロス取引で取得された議決権と優待権利のうち、議決権はまず行使されません。よって株主総会に下手に関心を持って欲しくない経営陣にとってはこの動きはむしろ歓迎と言えますが、まともな会社ならば望ましくない事でしょう。


そこでこの優待クロス取引の対策として、長期株主を優遇する優待制度に改正するという動きが広がっています。この流れで長期株主を優遇する会社が多数派になれば、株主優待のタダ取りは成り立たなくなるでしょう。

具体的な例を挙げると、日本取引所グループ(8697)の株主優待です。あまり知られていませんが東京証券取引所と大阪証券取引所などが統合した日本取引所グループ(以下JPX)は上場していて、株主優待を実施しています。

そのJPXが最近株主優待の変更を発表していて、2018年3月期の株主優待から変えるというのです。今までは継続保有年数に関わらずQUOカード3000円だったのが、以後は1年未満で1000円、2年未満、3年未満、3年以上と差をつけるという事です。

外部リンク:JPX株主・投資家情報(IR)株主優待

これだと優待タダ取りの1日株主にとっては優待額が3分の一になったのと同じなので、旨みが減少します。手間に見合わないと思えばタダ取りを断念する人も出てくるでしょう。

よって株主優待の長期株主を優遇する流れは、株主優待クロス取引問題の対策としてはある程度有効でしょう。東京証券取引市場の元締めであるJPXが実施する事なので、おそらくこれにならう企業が多くなるのではないでしょうか?


ただし、長期株主のみを過剰に優遇する事については疑問があります。何度も出てくる株主平等の原則です。

企業から見れば忌々しい1日株主ですが、株主平等原則にてらせば1日株主も10年株主も100株の権利は同じです。この権利に差をつける事は許されません。

株主優待は株主の権利ではなく、あくまで会社から株主への社会通念上許される程度の贈り物であるという建前です。だから差をつけても株主平等原則には反しないという理屈です。

つまり「優待権利」とは俗称であって本当は株主の権利ではありません。

こんな屁理屈を弄する(素晴らしい理論だとは思わいでしょう?)ぐらいなら、株主優待などやめてしまえと私などは思うのですが、長期株主を優遇する事が優待クロス対策に有効ならやむを得ないのかもしれません。それがJPXの判断なのでしょう。


問題の根は株主優待に換金性の高いクオカードなどの金券類を採用している事にあります。優待クロス取引の動機はてっとり早い金儲けですから、換金性が低く消化に手間のかかる優待に変えてしまえば良いのです。まともな株主なら別に文句は無いでしょう。

JPXならば株主限定の東証見学イベントの参加権とか、地方の株主には関連書籍の送付などはどうでしょうか?2015年に「コーポレートガバナンス・コード」を策定したばかりのJPXには上場企業のありかたについて、率先して全ての上場企業に範を示す義務があるでしょう。


外部サイト:コーポレート・ガバナンス(JPX)
外部参考記事:「コーポレートガバナンス・コードとは何か」(日経ビジネス)

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