前記事:株式課税の強化の議論について

株式の税金のみを現行の20%から引き上げるのは、「金融所得課税の一体化」の流れに逆らうからダメだ、というのが前回の話でした。

「金融所得課税の一体化」は、証券税制を整備して異なるクラスの金融資産の税率を揃えたり損益通算を可能にしたりする事によって、リスクを取りやすい環境を作る(仮想通貨がハイリスクなのは政府がリスクを取る事をサポートしてないから)、つまりカンタンに言えば投資をしやすい環境を作るところにその狙いがあります。

投資をしやすい環境を作ることによって、20世紀末の金融ビックバン以来の「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるわけです。

個人投資家の資金を市場に呼び込もうと、政府は98年に銀行窓口での投資信託の販売を解禁したほか、株式の売買手数料の自由化などの規制緩和を進めた。03年からは証券優遇税制が施行され、当時の小泉首相も施政方針演説で、「『貯蓄から投資へ』の流れを加速する」と言及。05年には郵便局でも投信を販売できるようになった。投資を促すことで、新しい産業や企業を資金調達面で支援するほか、株価対策の期待もあったと指摘される。

貯蓄から投資へ(コトバンク)



「貯蓄から投資へ」が国策であるのに、株式の税金を増税するのはこの流れに反します。税率を揃えるために株式だけでなく他のクラスの金融資産も合わせて増税するとしたらなおさらでしょう。

配当の2重課税の拡大の問題もあります。

配当の2重課税問題は法人税が高いところにさらに配当に課税するのが問題です。アベノミクスで法人税が減税されて2重課税問題が縮小に向かいましたが、ここでまた配当の税率を上げてしまえばまた2重課税問題が拡大する事になり、何をやっているか分かりません。

「貯蓄から投資へ」といえばNISA制度の問題もあります。

もともと株式の軽減税率を終了させるのと引き換えに(本来引き換えにするものではありませんが)創設された制度です。

軽減税率はもともと5年間の時限措置だったのを延長を重ねてきたものなので、終了は仕方ありませんが、NISA制度は「貯蓄から投資へ」の流れにそって国策として投資を推奨するものです。

NISA制度で投資を推奨しておきながら、株式への課税を強化するのは矛盾しています。

NISA制度を拡大してバランスを取るのはかまいませんが、NISA制度は少額の投資を優遇し奨励するものです。増税の場合は税率は小口の投資家も大口の投資家も一律に引き上げられるので、投資推奨の観点からも格差是正の観点からも不適切です。

かといって格差是正の観点から、大口の取引や配当だけに課税強化するのもこれまた「金融所得課税の一体化」に流れに反します。

サラリーマンの所得税の税率は695万円以下で20%、330万円以下で10%です。高額所得者が減って低所得のサラリーマン世帯が増えている現状から、投資を推奨するというからには税率を20%より引き上げるのは矛盾しています。

投資を推奨するなら軽減税率10%を復活させても良いぐらいです。それは無理でしょうが、「貯蓄から投資へ」の国策から言えば20%というのは微妙なラインという事です。

格差是正の観点からNISA制度だけを拡充して、税率を上げるのにも問題があります。株式市場が活況になるには流動性の提供が不可欠であり、税率を上げてしまうと取引が不活発になります。

今年から始まった積立NISAは基本的にインデックスファンドを対象にしていますが、アクティブな投資家がいて初めてパッシブな投資家が存在できるのであり、増税によって流動性を殺してしまうとインデックスファンドも死んでしまい資産形成どころではありません。

株価への影響という観点では、税率を上げると理論株価も低下します。心理面の悪影響もあって理論値以上に株価が下がるでしょうし、ひょっとしたら暴落の引き金になるかもしれません。

実際に前回の2014年の増税検討のニュースが流れた時は株価が反応して調整局面を迎えたらしいケースがありました。まあ株価の値動きは複雑な理由があるのでいちがいには言えませんが……


結局何が言いたいかというと、株式の配当や譲渡益にこれ以上課税するのは国策的にも格差是正の観点からも正当性がなく、百害あって一利無いという事です。

おそらく証券会社各社や業界団体も反対の意見を提出するはずで、証券会社の口座を持っている人には署名のお願いが来るはずです。その時はバンバン協力してあげて、個人投資家の意見を反映させましょう。

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