「無貯金の50歳代が3割超 「貯蓄ゼロ」中高年のサバイバル術」という週刊東洋経済の記事が話題の元になっています。

記事を読むと、

50歳代無貯金の世帯は多い。金融広報中央委員会が毎年定期的に行う「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯で貯蓄ゼロという世帯が、50歳代だと31.8%にも上っている


この記事を読んで、「2人以上世帯で貯蓄ゼロという世帯が、50歳代だと31.8%にも上っている」のか!と衝撃を受けるようです。

外部リンク:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 平成29年調査結果

元データはここにあります。「知るぽると」という金融広報調査委員会(事務局 日本銀行情報サービス局内)が運営するサイトに掲載されているので誰でも見ることができます。

Excelのデータをダウンロードして見ると、


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このようになっていて、「金融資産非保有」の割合が50歳では31.8%になっています。

「2人以上世帯で貯蓄ゼロという世帯が、50歳代だと31.8%にも上っている」という元記事の記述はここから来ていると思われます。

でもちょっと待って下さい。

50歳代無貯金の世帯は多い。金融広報中央委員会が毎年定期的に行う「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯で貯蓄ゼロという世帯が、50歳代だと31.8%にも上っている



この短い文章の中だけでも、「無貯金の世帯」と「貯蓄ゼロという世帯」というよく注意して読まなければ分からない表記のゆれがあります。

そして元になった調査データは、「金融資産」について調べたものなのです。

もうお分かりだと思いますが、元記事は調査結果について誤解して書いているか、もしくは意図的に誤読して書かれれています。

*この調査で「金融資産」とは、預貯金などの金融商品を指します。お答えいただく際には、以下の点にご留意ください。

① 「金融資産」には、土地・住宅・貴金属等の実物資産は含みません。また、現金も含みません。

② 商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している金融資産は除いてください。

③ 預貯金については、定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分を「金融資産」とし、日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除いてください。(詳しくは問3(a)をご覧ください。)

*なお、この調査で「貯蓄する」とは金融資産取得に資金を振り向けることを言います。

家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 平成29年調査結果(単純集計データ)



この調査は「金融資産」について調査するもので、現金や生活口座に入っている生活費はカウントしていないのです。

タンス預金なども「金融資産」ではないので対象外で、極端に言えば自宅に1億円を保管している人でも、統計上は「金融資産非保有者」になっています。

常識的に考えて、「50歳代無貯金の世帯」が全体の3割もいるはずはありません。

そんな江戸っ子みたいに「宵越しの金は持たねえ」人が多かったらこんなにデフレの世の中になっていません。


元記事のタイトルからして「中高年のサバイバル術」と煽っているので、「無貯金」「貯蓄ゼロ」というあいまいな記述で記事の導入部分に持ってきたものと思われます。

まがりなにも経済専門誌の看板と、日銀内部の組織が集計しているデータを持ち出して権威づけして、どうせ一般読者はそこまで調べないから分からないだろう、と書いているのではないかと思います。

それが邪推だとしても、本当にデータを誤読して書かれた記事を掲載しているのなら、どっちにしても経済専門誌としていかがなものかと思います。


「バカじゃないの」とは書きましたが、一般読者がこんな事まで分かるはずはありません。

しかし直感でちょっとおかしいな?と思う人は多いはずですし、そういう人はもはや新聞や経済紙の記事などいちいち信用していないはずです。

一般人でも調べれば記事の裏は取れる時代ですし、こういう事ばっかりやってるとますますマスコミの信用が落ちると思うのですがいかがなものでしょうか。

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