前記事:セミリタイア後の長生きリスクに備えるのにトンチン保険は不要

セミリタイア後の長生きリスクに備えるためのリスクヘッジは、私は年金の繰り下げ受給で行う事を検討していますというのが前記事の結論でした。

では実際、年金の受給開始年齢を遅らせる事でどれぐらい年金が増えるのか。またその場合通常受給より総支給額が多くなる、プラスに転じる年齢はいくつなのか?

計算は意外とカンタンです。

日本年金機構のサイトによると、

昭和16年4月2日以後に生まれた人については、支給の繰下げを申し出た日の年齢に応じてではなく、月単位で年金額の増額が行われることになります。また、その増額率は一生変わりません。
(中略)
 増額率=(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までに月数)×0.007

老齢基礎年金の繰り下げ受給(日本年金機構)より引用


1年年金の受給開始を遅らせると、12か月×0.7%で8.4%の年金増額になります。これが死ぬまで続くので長生きすればするほど得になる。

1年受給を遅らせる事で損する分を増額分で取り返すのには、一年分を100%として一年分の増額率8.4%で割ると約11.9年ほぼ12年かかります。

結構単純な計算です。これを表にすると以下の通りです。

年金繰り下げ

65歳から70歳まで年金受給を遅らせるだけで、増額率は42%にもなりそれが死ぬまで続きます。人生100年時代が来るとしたら、これほど強力な長生きリスクに備える保険は無いでしょう。

だとしたら長生きに備えて無駄な保険を買うお金があったら、多少は年金受給を遅らせても問題無いように、自分で貯蓄運用しておいた方が良いと思います。もちろんその為にはちゃんと年金保険料は払っておかなければなりません。

公的年金は長生きリスクに備えるための保険と割り切って考えた方がいいかもしれません。

なお日本人の平均寿命は現時点で男性81歳女性87歳ほどですが、数字のトリックがあって、厚生労働省の出した平成28年簡易生命表によると70歳の人の平均余命は男性15年女性20年ほどもあります。

統計から理論的には年金の繰り下げ受給はかなり有利な賭けになっています。

外部参考リンク:平成28年簡易生命表の概況(厚生労働省)


以下は落とし穴的な注意点についての注意書きです。

・税金と社会保険料を考慮していないので、老後に税率が上がるほど収入のある人はまた別に計算が必要。
・将来的に受給開始年齢が65歳から後ろにずれる可能性がある。
・老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げ受給できる。
・繰り下げ期間中の加給年金は貰えなくなるので受給資格がある人は老齢基礎年金だけ繰り下げする手もある。(加給年金の受給資格は厚生年金を20年以上払っていて配偶者や子供のある人)

理論的には繰り下げ受給は長生きリスクに対する公的年金ならではの有力なリスクヘッジになるのですが、実際にこの制度を利用している人は全体のなんと1%台しかいません。

利用する人が少ない制度ほど実際には利用価値があります。このようなリスク要因を自分で洗い出して適切な行動を取れる人は実際にはほとんどいません。

繰り下げではなく逆に繰上げ、つまり65歳以前に年金を受け取る制度の利用者は約4割もいます。リスクヘッジもへったくれもない行動様式ですが、人間の経済行動は理屈ではないようです。

それにしたって日本人バカ過ぎ……いや失礼しました、年金受給を遅らせる事が出来るのは経済的に余裕のある人だけですものね。ただやはりこの結果は偏りがありすぎるので、日本は金融教育の機会が不足しすぎていると感じます。

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