JTこと日本たばこ産業(2914)の株が売られている理由のひとつと言われているのが、ESG投資による海外機関投資家の資金シフトの流れです。



16日にロシア4位のたばこメーカー、ドンスコイ・タバックを約1900億円で買収すると発表した。環境や社会に配慮した企業を評価する「ESG投資」に取り組む機関投資家が増えており、海外のたばこ事業を収益拡大のテコにする買収戦略に失望した売りが出ているもようだ。株式市場では「(非たばこ事業である)食品や医薬品などを柱にした事業拡大策でないと、長期的な収益成長は難しい」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成上席執行役員)との声があった。


確かにJTは食品加工品事業や医薬品事業も手掛けて多角化していますが、本来の事業は言うまでもなくたばこ事業です。

何せ、「日本たばこ産業株式会社法」通称JT法という法律の第1条にそう定めてあります。

(会社の目的)
第1条 日本たばこ産業株式会社は、たばこ事業法(昭和59年法律第68号)第1条に規定する目的を達成するため、製造たばこの製造、販売及び輸入に関する事業を経営することを目的とする株式会社とする。

日本たばこ産業株式会社法


そのJTに向かって、しかも国内の市場が縮小しているのに、「海外のたばこ事業を収益拡大のテコにする買収戦略に失望」というのは売る理由づけにしてもあまりにも酷いですね。

八百屋に向かって、さいきん野菜を売るのは感心しない風潮があるから本来業務を拡大するのはやめて魚や肉も売って多角化しろ、と言ってるようなもので、こんなものはいいがかりに近いので八百屋は怒ってもいいと思います。


とはいうものの、「ESG投資」の影響は無視できません。

外部参考リンク:ESG投資(いーえすじーとうし)野村證券

JTの株主構成は政府と自社(自己株口)が合わせて44%弱を持ちますが、残りの株主のうち最大の勢力は27%を持つ国外機関投資家です。

国内の個人投資家の比率は5%ほどしかありません。


外部リンク:ESG投資 株高導くか 環境や社会貢献、稼ぐ力カギ

この記事には「運用資産に占めるESG投資の割合は、欧州の53%や米国の22%に対して日本は3%にとどまる」とあります。

2017年時点で、特に欧州ではここまでESG投資の割合が上がってる事には驚きます。日本の3%というのは納得いきます。現時点でGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用しているESG投資の割合がそれぐらいだからです。

外部リンク:サステナ、AI技術を用いた企業評価サイト「SUSTAINA」を公開。全上場企業を含む4,000社強のESG格付情報を提供開始。

国内でも2018年に入ってからこういう動きも出てきました。個人でも会員登録すればESG格付情報を見る事ができます(基本有料)

しかしESG投資は昔のSRI(社会的責任投資)的機械的なスクリーニングから、最近では普通のアクティブ運用に近いものが多くなっているらしいです。

JTの企業としての社会貢献の姿勢にはかかわらず、タバコ銘柄というだけで売りの対象にされている可能性もあります。

これは売りの理由としては問答無用で、安くなったら買い戻すといった性質のものではないので、需給要因としてはかなり悪いものです。


Jt.png


JTの3年チャートです。2016年の後半から目に見えて売られていますが、この期間のJTの株主構成における外国法人等の割合は次の通りです。

2015年3月 33.63%
2016年3月 32.10%
2017年3月 30.92%
2018年3月 27.44%

毎年のように外国法人等の持ち分が減り続けており、売りの主体が外国人である事が分かります。


このような事情もあり、国外機関投資家は売り、国内個人投資家は買い、といった構図ができあがってるといえます。

高配当のたばこ株は疑似債券的な性格があり、マイナス金利状況下の日本の個人投資家にとっては十分に買う合理的な理由があります。

今後米国の金利が上昇していき、日本の金利が低いままだと、ますます外国人が売って日本人が買うという状況になってくるでしょう。

そういう基本構造をESG投資が強烈に後押ししているのではないのかということです。

外国と日本の違いといえば、日本では時代も変わってきたとはいえ、まだまだ比較的タバコやアルコール、ギャンブルなどのESG投資にとってのネガティブ要因に寛容な空気がありますしね。


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