カテゴリー:税金・確定申告
上場株式の譲渡損失の繰越手続きを忘れた人の末路

上場株式の譲渡損失は確定申告する事により3年間繰り越す事ができます。

例えば、源泉徴収あり特定口座(殆どの人がこれ)で、

2017年 損失100万円 
2018年 利益50万円
2019年 利益50万円

のケースで考えてみます。

この場合、所得税に関して最善の行動は、

2017年 損失100万円を確定申告、損失100万円を繰越
2018年 利益50万円を確定申告、損失50万円を繰越
2019年 利益50万円を確定申告

となり、このケースだと所得税が全額還付され無税になります。


しかし2018年で確定申告しなかった(繰越控除の存在を忘れていた)場合は、2019年に損失が繰り越されないので、2019年に確定申告しても払い過ぎた税金は還ってきません。

ただし、単に確定申告を忘れていただけなら、期限後申告という事で2018年分の確定申告をして、その後2019年の確定申告をすれば良いので問題ありません。


問題なのは、2018年に確定申告をしていて、損失の繰越しの手続きをしなかった場合です。

上場株式の譲渡損失の繰越控除は申告書の連続した提出が要件なので、この場合は確定申告をやり直す必要があるのですが、申告期限が切れた後(更生の請求)だと、源泉徴収あり特定口座の場合これが認められないのです。

なぜかというと、源泉あり特定口座で確定申告して損失の報告をしないと、申告不要を選択したという意思表示になってしまい、そこで話が終わってしまっているからです。本人は単に忘れたと思っているのに主張した事になってしまっているんですね。

こういう事が起こるのは給与所得や事業所得があって何かしら確定申告する必要があるけど、株式に関しては(源泉徴収口座だから)忘れていたという場合です。

取り返しがつかないので、毎年確定申告するという人でマイナスが残っている人は損失繰越の手続きだけは絶対に忘れないようにしましょう……


配当所得に関して、所得税は総合課税、住民税は申告不要(源泉徴収で終了)で申告する事により、国民健康保険料などの判定に影響を及ぼす事なく、配当控除のメリットだけを受けて税金を安くする事ができます。

関連記事:【超朗報】上場株式等の配当の課税方法、実質見直しで所得税と住民税を別々に分けることができる!【配当生活に追風】

配当金生活では源泉徴収と比べていくら安くなるのか、具体的に計算してみます。

モデルケースでは日本株1億円、配当利回りを3%とし、税引き前の配当所得300万円のケースで考えてみます。配当以外の所得はゼロとします。

源泉徴収では、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)が源泉徴収され、そこで申告不要制度を利用した事になり課税が終了になります。何もしないでいいのでラクではありますが……

この税率だとざっと税金61万円弱です。1億円の資金を用意しても、300万円の配当のうちこれだけ税金を持っていかれるとなかなかツラいですね。

そこで確定申告する事を考えます。

源泉徴収ありの特定口座でも、あえて配当所得を確定申告する事はできます。

わざわざ確定申告するのは配当控除を受ける為ですが、住民税を申告するメリットは配当控除を考慮してもほぼ無いので、所得税のみ総合課税で確定申告し、住民税は申告不要制度を利用(市区町村役場に別に申告)します。

すると課税は次のようになります。

・所得税10%(累進課税。課税所得金額195万円超 330万円以下のゾーン)で配当控除率10%、正味税率0%。所得税率5%(課税所得金額195万円以下のゾーン)で配当控除率10%、正味税率0%(控除しきれない分は他の所得に係る税額から控除できる)
・住民税5%(申告不要制度を利用。源泉徴収のまま)

合計で5%になり、このケースで金額にして15万円になります。

つまり日本株1億円、配当利回り3%、配当金300万円、その他の所得ゼロのケースで、税引き後の配当金は源泉徴収の場合は240万円弱所得税は総合課税、住民税は申告不要で別々に申告した場合は285万円になります。

確定申告の方法を検討するだけで、その差はなんと45万円ちょいにもなります。

この例では所得が配当所得のみで非常にシンプルなので間違えようがないですが、実際は人によって収入の種類や家族構成などは全然違うので多少損益分岐点の計算が複雑になります。

しかしそれでも基本的に配当所得を所得税は総合課税、住民税は申告不要(源泉徴収で終了)で申告する事によって所得税で配当控除を受け、住民税は申告不要で5%に留めるのが有利なケースが多いのは間違いないでしょう。低所得者は特にそうです。

法律改正で配当所得を確定申告しても住民税を申告不要に出来る事が明確化されたので、国民健康保険料などの判定に影響しなくなり、以前のように社会保険料込みでの複雑な損益分岐点の計算をする必要が無くなりましたし、住民税で配当控除を受けるより申告不要とした方が住民税の税率も安くなるからです。

以下は簡単な判定表です。

h.png ※復興特別所得税を一部省略しています

330万円以下だと所得税がゼロになるので一番美味しいゾーンです。195万以下の部分は配当所得だけだと控除が余る形になっているので他の種類の所得を増やす事を検討しても良いかもしれません。

330万円超695万円以下の部分も源泉徴収に比べ5%ほども安くなります。695万円超900万円以下でもまだ少しだけ安くなりますね。なので課税所得金額が900万円以下の人は住民税の申告書を別に提出する事を条件に、確定申告して損をする事はありません。

参考記事:【配当所得】所得税と住民税で別々の課税方法を選択する手続きについて市役所で聞いてきました

配当金生活と言えるほど配当所得がある人は、表を見ながら他に個人事業、アルバイトなどでいくらまで稼ぐのが効率が良いか考えると良いでしょう。

現在そこまで配当所得が無い人も、税制的にお得なのは明らかなのでサラリーマンをしながら配当所得を増やしていくモチベーションにつながるのではないでしょうか。

関連記事:配当所得のある人はサラリーマンでも大半の人は確定申告すると税金がお得になる

極端に所得が少ないセミリタイアだと住民税非課税世帯を狙える人もいると思うのでまとめました。

まず住民税には所得割均等割があります。

所得割は全国一律で所得が35万円(配偶者や扶養親族がいない場合)以下で非課税になります。この金額を「非課税限度額」と言います。課税所得でなく所得で判定される事に注意して下さい。収入から経費(給与所得控除も)を引いたものが所得、そこから所得控除を引いたものが課税所得です。判定に使うのは所得(正確には合計所得金額)の方です。単身世帯は35万円ですが配偶者や扶養親族がいる場合は以下の計算になります。

35万円×世帯人員数+32万円(2021年度以降はさらに10万円加算)

均等割の「非課税限度額」の基本額は自治体によって違って1級から3級までの級地区分があり、28~35万円まで幅があります。

参考:級地区分一覧(Wikipedia)(あくまで参考なので自治体のHP等で確認するのが確実です)

配偶者や扶養親族がいる場合は以下の計算になります。

1級地:35万円×(世帯人員数)+21.0万円
2級地:32万円×(世帯人員数)+18.9万円
3級地:28万円×(世帯人員数)+16.8万円

均等割の方が条件が厳しいので、住民税非課税世帯というとふつう均等割が非課税の世帯を指します。住民税非課税世帯になると他の判定にも影響してくるので狙えるなら狙いたい所です。

「非課税限度額」はあくまで住民税の非課税判定に使うだけの特別な制度です。28万円とか35万円とかいう数字は非課税判定のチェックが終わったら忘れて下さい。扶養控除の制度とかとごっちゃにすると混乱します。

本記事はあくまでセミリタイアの税制の自己研究なので間違いがあるかもしれません。確実な所は自治体に問い合わせるなり確認して下さい。

スマホで確定申告、通称スマート申告は既に2019年から利用できるようになっています。

ただしあまりにも利用制限が多く、ごく一部の人しか利用できない仕様になっており当時は大不評でありました。

過去記事:【悲報】スマホで確定申告、スマート申告が超絶使えなかった件【やっぱり】

ざっくり言うと、一つの会社の給与所得者で副業も投資もしない人が、医療費控除とふるさと納税(寄付金控除)の申告をする時しか使えないという、限定的かつ残念な仕様になっていました。

しかしその後システムの改修を行い対象者を拡大、2020年1月6日(月)から稼働する令和元年分の確定申告サイトは大幅に使いやすくなったらしいです。

さっそくスマホで国税庁のサイト、確定申告書作成コーナーに飛んで試してみました。

外部リンク:国税庁 確定申告書等作成コーナー


 

見た目は以前と変わってませんね。

 


 

以前はここで「いいえ」を選択して過去の年度の申告をしようとすると、「お手数ですがPC版をご利用下さい」と表示されて門前払いだったのが、選択できるようになっています。ただし進めていくと結局PC版の画面に飛ぶようになっていたので、今年度分以外の申告をする場合はやはり画面の広いPCで普通に作業した方がはかどるでしょう。

提出方法の選択は、「ID・パスワード方式」のe-Tax(電子申告)か、従来の書面での提出のどちらかです。「ID・パスワード方式」って何?という人は「?」マークをタップすると、


 

このように用語解説が表示されます。「ID・パスワード方式」ならばマイナンバーカードやカードリーダ無しでもスマホで電子申告が可能です。ただし事前に1回は税務署に出向いて届け出をする必要があります。

なお2020年1月末以降は、マイナンバーカード対応のスマホであれば「マイナンバーカード方式」で電子申告できるようになるようです。この場合は事前の届け出が不要だし、長いID・パスワードの入力も必要無くなります。ただマイナンバーカードと対応スマホを事前に用意する必要はあるので、便利かどうかは人によるでしょう。

外部リンク:マイナンバーカードに対応したNFCスマートフォン一覧(国税庁、PDFファイル)

 


 

以前は給与以外の収入があれば「PCでやれや」と無情に追い返されていたのですが、これだけ選択できるようになっています。二か所以上で給与収入がある人、副業や年金等の雑所得がある人などが新たに対応になっています。

用語解説もあるので収入の種類が分からない人も安心です。

 


 


 


 

所得控除に関してですが、平成30年分は「医療費控除」「寄附金控除」だけがスマホ版対応でした。令和元年分からは「全ての所得控除」が対象になっています。他にも税額控除で「災害減免額」が新たに対応しました。

 

ただし以上の全ての申告がスマホ版の画面で申告できる訳ではなく、申告内容によってはPC版の画面に遷移するようになっています。というか少しでもこみ入った申告だとすぐにPC版の画面に飛ばされてしまいます。

どうも前年の何をやっても「それはPCでやれや」と表示されてしまう仕様が不評だったので、スマホ版で出来ない申告は全てPC版に飛ばすようにしたのではないかと推測します。だったら最初からPCでやるけどな……

 

というわけで、令和元年版のスマホで確定申告、スマート申告は進歩は見られるものの、まだまだという気はします。とはいえ改善は見られるので朗報とまでは言えませんが少しは使えるようになったのではないでしょうか。